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HOME特集>開幕戦を制した田中・鈴木ペア。 確かなるロンドンへの第一歩

特集 JBVツアー開幕!!

確かなるロンドンへの第一歩

 『ファイテンJBVツアー2009』第1戦愛知オープン、西堀健実(エスワン)・浅尾美和(エスワン)ペアとの準決勝。田中姿子(フリー)・鈴木洋美(フリー)ペアは、第1セットを先取されたものの、第2セットから逆転で勝利をおさめた。激戦を終え、記者に囲まれた田中にこんな質問が飛んだ。 記者「妖精(西堀・浅尾)ペアとか、レインボー(浦田・楠原)ペアとか他のチームは愛称があるけれど、このチームの愛称は?」 田中「貧乏ペアとか、無職ペアとかどうですか?(笑)」。  田中・鈴木ペアは、現在参戦しているワールドツアーに自費で参戦、環境面を踏まえても今季はまさにゼロからのスタート。そんな意味を込めて、田中は得意の愛嬌でおどけて見せた。 JBVツアー第1戦愛知オープンを制した田中姿子(左)・鈴木洋美(右)ペア
写真:坂本清

一致した2人の想い

 女子史上最高身長186cmの鈴木と、日本屈指のサウスポー・田中。今季新ペアを結成したいきさつは、ビーチバレーに対する想いが揺れに揺れた末の決断だった。

 鈴木は、昨年の今頃「私のバレー人生は北京を最後に終わります」ときっぱりと言い切っていた。いつでも実直に、自分の気持ちをめいいっぱい表現する鈴木らしく「自分の気持ちを隠すつもりはない」と、周囲にも今後の進退を公言していた。昨季シーズン終了間近になっても「今後のことはゆっくり休んでからあせらずに決めっていきたい」とその想いは変わる様子はなかった。そんな鈴木の固い心を溶かしたのは、もう一度五輪出場を目指そうと決意した田中だった。 「ヒロがビーチバレーを辞めようと思っているというのを聞いて、本当にもうやる気はないのかなって、ずっと思ってたんです。六本木の大会が終わった次の日、すぐにヒロに電話して、本当に辞めるの?って会って話をする時間を作ってほしいって言いました。その後、ヒロの実家まで押し掛けて、ビーチバレーは2年くらいやっただけでつまらない、と判断できるようなスポーツじゃないとヒロに言いました。巧さ、技術というのは、確実に練習で培っていける。それはどの選手にも言えるし、自分にも言えること。でも、身長だけは、あと5cm伸ばしてくれっと頼んでも絶対にできない。それを最初から持っていることは、大きな一つの武器だと思ったんです」  

 田中のビーチバレーに懸ける想い、もう一度五輪を目指そうという熱心な説得は、確実に鈴木の心に響いていた。 「姿子さんはロンドンに向かってこういうふうにやっていきたいんだよね、って熱っぽく話してくれました。でも、まだその時点では、続けるつもりはなかったし、もしやったとしても、4年後のことまで考えてプレーするのではなく、とりあえず1年とかそんな感じに思ってました。だけど改めて進退を考えるようになった時、姿子さんの話を思い出してみると、すごく楽しそうにビーチバレーをやってるんだなって思ったんです。今までの私は、ただただ大変でしんどいというのばっかりを感じていたんですよ。だから、もうやりたくないという気持ちが勝っていた。それが、ビーチバレーを楽しんでいる姿子さんと一緒にやったら、ビーチをまったく違う視点で見られるかもしれないと感じ始めたんです」  鈴木は、06年にビーチバレーに転向してから、急速なスピードで成長を遂げてきた。しかし、北京五輪出場という目標を掲げ、残された時間が少ない中で、いつの間にか大きな目標が『重荷』と化していった。大きな荷物を下ろして真っ新になって考えた時に、鈴木はもう一度ビーチに戻ろうと決心した。

ゼロからのスタート

 田中・鈴木ペアは、今年1月から練習を開始。これまでの環境を卒業し、専属のコーチもいない中で、たった2人だけの練習が始動した。鈴木は言う。 「練習にしても、自分たちだけで考えて身に付けていくという作業。コーチがいて、コーチの指示で動いているというのとは違うし、明らかに自分たちで考えて練習しているので、その場面の記憶とともに体に刻まれてる。それは、私にとってはすごく新鮮な感覚でした。バレー人生の中で、初めて感じていることかもしれない」  3月までは徹底的に基本練習を重ね、「少しでも賞金を稼ぎにいきたい」という想いで4月初旬からアジアサーキットを転戦した。現在、田中も鈴木も所属先はフリー。背後にメインスポンサーはおらず、大会に出向くための旅費はすべて自費、収入は大会の表彰賞金しかない状況である。 「現在、ヒロも私もスポンサーがいないフリーの状態。経済的にはとても苦しいという現状ですが、その現状に目をつぶっても、ワールドツアーには出場したいしすでにエントリーはしています。スポンサーのことも、検討中というところから、OKの返事がもらえるかもしれませんし、試合が始まっても、1回ずつの大会の費用だけでも助けてもらえませんかって、何度でも頭を下げに行くことも視野に入れています。それに国内大会で勝っていければ、それを重ねていくことで強化選手として認められるということもあるかもしれない」(田中)  目標はあくまでもロンドン五輪。長いスパンで地道に結果を残していくことを前提にあきらめない姿勢だ。

開幕女王の称号

 そんな強い想いを抱いて臨んだ第1戦愛知オープン。決勝では、優勝候補の一角に挙げられていた浦田聖子(MDI)・楠原千秋(フリー)ペアと対戦。「準決勝の時にスタートが悪かったので決勝戦では先手をとろう、攻めていこうと意識した」と鈴木が語るように、序盤から鈴木の高さ、スピードのある田中のレシーブが見事に噛み合い、勝負所でボールを次々に拾い、得点を重ねていく。田中・鈴木ペアは主導権を握って離さず、チームのムードも上々。ブロックノーマークで強打を打つ際、「オリャーー!!!!」と田中が雄叫びをあげれば、鈴木は腹を抱えて大笑いする。心からビーチバレーを楽しみながら、さらにはお客さんを楽しませながら、ゲームを支配した田中・鈴木ペアは会心のストレート勝利。『開幕女王』の称号を手に入れた。 「本当の勝負はこれから。今週からワールドツアーに参戦する。世界で勝つためにはやることは変わりない。これからもっと練習してチームの土台を作って積み上げていきたい。環境的にも経済的にも大変だけど、目標に向かって自分たちで歩いていくことは、すごく楽しみ」(田中)  自分たちの可能性にワクワクしながら、世界に通用するチームテーマを探す旅は、まだ始まったばかり。ロンドン五輪に向け、確かなる一歩を踏み出した田中・鈴木ペアの今後が楽しみだ。

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