今季で4年目に突入した長谷川徳海
撮影/飯島剛史
『駆け引き』の意味
──2009年は、ペアの解散を経験し、各大会にいろいろなペアで出場しました。あらためて振り返ると、どんなシーズンでしたか?
「シーズンの途中でペアを解散したことは大きかったですね。個人的にはそれ以降、結果を残せなかったと思っています。だけど、そのまま(青木)晋平さんと組んでいたら、受けることができなかった刺激を受けることができたので、そういう面ではプラスになりました。
僕と晋平さんは、ずっと同じコーチの元でやっていたので考え方が同じだったんですけど、昨年は途中からフリーという立場になって違う環境、違う場所でビーチバレーをやってきた堀内(琢也)さんや(森岡)大生さんと組んだことで、これまでとはまた違う考えを聞くことができました」
──さきほど「結果が出なかった」とおっしゃいましたが、JBVツアー第4戦で準優勝(パートナー:西村晃一)、JBVツアー第5戦で7位(パートナー:堀内琢也)、ふくいカップで5位(パートナー:森岡大生)という数々の結果を残してきましたが…。
「そうなんですけど、自分としては表彰台に立ち続けたかったというのがありました。結局僕が表彰台に上り始めたのは、今まで表彰台に上っていた選手と組んでいたときだけ。そういう面では悔しかったんですよ。西村さんとの準優勝も、実績を考えたら当たり前の結果だと思います」
──とはいえ、急造ペアにもかかわらず、激戦を次々に制していく姿は印象的でした。特に、JBVツアー第5戦9位決定戦での青木晋平・日高裕次郎ペアとの試合は、壮絶な内容でしたね(第1セット、第3セットがデュースにもつれこみ、フルセットの末勝利した試合)。
「あの試合は、学ぶことが多かったですね。試合の途中で相手が負傷してインジュリータイムをとったんですけど、堀内さんがその状況を見ていて、相手が走れない状態だと判断した。それで堀内さんは敢えて強打を打たずにショットだけを打っていった、ということを試合後に聞いたんですよ。僕だったら、絶対強打を打ち続けていたと思うし(笑)、堀内さんの考えを聞いて、そうすることで勝ちやすくなるんだって気付きました」
──今まではそういう発想がなかったと…。
「今までの僕は、練習でやっていることをきっちり出して、自分のベストなプレーを出すことができれば勝てる、と思っていました。だけど、それは大前提であって、なおかつ相手の状況を見て作戦を立てていくことが必要なのかな、と気付きました。それが本当の意味での『駆け引き』というものなのかな、と」
──単純に、相手のいないところに打つとか、そういう技術的な部分以外にも駆け引きがあると?
「言葉で表現するのは難しいんですけど、スパイクで言えば、自分の打ちたい球じゃなくて、決まる球を打っていかないといけないってことですかね。実はそれは僕の言葉じゃなくて、新潟国体の新潟女子のコーチだった望月(剛)さんと話していたときに言われていて、それは一理あるなって納得しました」
──そのとき、決まる球を判断していかないといけない?
「そう、相手の状況を見て打っていくことが大事。今までは、僕が打ちたい球を打ち続けていたわけですよ。ブロックにしても、ナベ(渡辺聡)さんが言っていたんですけど、『1番(ストレート)ブロックにしてもいろんな1番ブロックがある』と。それは相手が打ちたいコースを頭に入れてブロックの仕方を変えるということで、それを聞いて自分よがりのプレーではダメなんだなと実感しました。そういう意味で、今年はいろんな人に話を聞く機会が増えたので、視野が広がりましたね」
──その課題に関しては、今季のオフシーズンに取り組んでいるんですか?
「はい。でも、まだ上手くいかないし難しいです。それでも、考え始めたってことはいいことかなと。今まで周囲からよく、『ビーチバレーをしていないね』って言われることがあったんですけど、それは自分のやりたいことばっかりやっていて、ビーチバレーに勝つために必要な相手のことを見て考える、ということをしていなかったからかなと、最近思い始めました」
撮影/坂本清
まだ見ぬ世界を…
──2010年は、井上(真弥)選手とペアを組まれるそうですね。「リトルさん(井上選手の愛称)は、僕がビーチバレーを始めて2年目のときからずっと誘ってくれていたんです。だけど、僕は(青木)晋平さんと組みたいという気持ちがあったのでお断りしていました。それでも、リトルさんは、昨年のワールドツアー三亜オープンに出る前の段階から一緒にやらないか、と声を掛けてくれました。
正直に言うと、他の方からもオファーがあったので悩んだんですけど、リトルさんとやっていくと決めたのは、ワールドツアーをまわりたいという気持ちが一致したことと、なおかつ技術的な面で学べることがあると思ったからです。これから世界を目指していくうえで、僕がしっかりパス、トスを上げていかないと、高いブロックを前にしてリトルさんは決めきれない。技術的な精度を高めていかないと勝てないのはわかりきっていることなので、必然的に向上心が湧いてくる。そういう状況に自分を追い込みたいと思いました」
──今季、重点的に強化していきたいところは?
「言ってしまえば、全部ですよ。僕が苦手としているパス、トスの精度を求めていきたいですし、ブロックとレシーブの関係もしっかり固めていきたい。世界で勝っていくためにはサーブ力も上げていかないといけない。あとは、パートナーとの会話を増やしていくこと。今までは、ただ『はい』、『はい』とパートナーの言うことを聞いているだけだったので、聞くにしても答えるにしても、『僕はこう思っているんですけど、どうでしょうか?』とか、こんなふうに自分の意見を踏まえて会話をしていかないといけない。今までは気持ちの面でも弱かったし、コミュニケーション能力もないに等しかったし、未熟でしたね。今年は、しっかり話せるようになりたいと思います」
──ワールドツアー出場を視野に入れてるとのことですが、環境面は整いつつあるんですか?
「今まで桐原(勇人)さんの好意で時間が空いているときに見てもらっていたんですけど、専属のコーチはいない状況です。そうなると、どうしても練習の質が落ちてしまうので、そこはリトルさんとともに頭を痛めてるところです。とはいえ、悩んでばかりいても始まらない。今ある状況でどうすればいいか?を考えていかなければいけない。コーチを雇うにしても、ワールドツアーにまわるための資金を作るにしても、金銭面の問題は、本当に難しいですよ」
──そんな中、五輪という目標を叶えるためには、どうすればいいと考えていますか?
「トレーニングにしても技術的な部分にしても、計画的に考えていかないとダメですね。段階ごとに目標を作ってそれをクリアしていくしかないです。以前、ナベさんや白鳥(勝浩)さんが、『ワールドツアーをまわりたいから、日本一になりたかった』と言っていて、そのときは意味がわからなかったんですけど、この立場になって初めてわかりました。日本の現状では、それが一番早い。だから、今年は絶対に白鳥・朝日(健太郎)ペアに勝たないといけないんです」
──五輪の出場規定が変わり、次の五輪予選からはアジア大陸予選、五輪最終予選が設けられ、各国最大2チームまでが出場できます。その2チームに入るためにも、国内で勝つことは重要になってきますね。
「はい。枠をとるためには、白鳥・朝日ペアに勝ち続けないといけない。おそらく枠を決めるための国内予選とかも行われると思うんですけど、それだけに懸けるのではなく、普段から白鳥・朝日ペアを破るチームになって、誰が見ても僕らが強いということを証明する。そこに勝ち続ければ、絶対に枠はとれると思っています。
この壁を越えることができれば、見える世界がまた変わってくると思います。やっぱり勝たないと何も見えないし、変らない。勝つためにはやり続けないと…」
──そのためには、先ほど挙げられた課題をクリアしなければいけないですね。
「相撲にたとえると、横綱と弱い力士ががっぷり組み合ったら、投げ飛ばされて終わるじゃないですか。そこをどう研究して戦うかですね。周りの方からよく『男子はどこが勝つかわかっているからつまらないよ、人気でないよ』って言われます。確かに女子は、僕が見ていても『今回がどこが勝つんだろう?』って面白いと思いましたし、毎回盛り上がっていましたよね。
男子も、白鳥・朝日ペアのライバルがいないと絶対に盛り上がらない。このままだと国内の大会では、白鳥・朝日ペアもマンネリ化してしまうと思うので、僕たちが黒星をつけることで、白鳥・朝日ペアもさらに強くなってもらって、お互い切磋琢磨していくのが、ベストなカタチだと思います。今年は、本当に勝負。そこを乗り越えた先には、最高の景色が待っている気がします」
PROFILE はせがわ よしうみ
1984年8月23日生まれ。25歳。新潟県出身。
身長186cm。中越高、中央学院大学出身。 フリー。







